食卓からウナギが遠のく!? 規制強化めぐる国際会議が開催
https://news.yahoo.co.jp/articles/dbeecc168d41d032b059c16418fe60a94f0b0292
日本の食卓に欠かせないウナギ。その輸入をめぐって国際会議が開催されています。
結果次第では価格が高騰するおそれもある中、“格安ウナギ”を生み出す切り札となる「完全養殖」に注目が集まっています。
ウナギの保全と持続的利用について研究を行う、中央大学の海部 健三教授と“深掘り”します。
■すべてのウナギが規制される? 国際会議で議論スタート
絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の第20回締約国会議が11月24日からウズベキスタンで開催されています。
EU=ヨーロッパ連合などが提案したのは、ニホンウナギを含むすべてのウナギの取引規制です。ニホンウナギやアメリカウナギは絶滅のおそれがある上、すでに規制対象となっているヨーロッパウナギと見分けがつかないことから違法取引が行われているとして、全種類を規制すべきと主張しています。
一方、日本は「二ホンウナギの資源量は十分で絶滅のおそれはない」と主張。「輸入する際に遺伝子検査などでヨーロッパウナギと判別可能」としていて、規制の否決に向け各国に理解を求めていく方針です。
■二ホンウナギの数は減っている?十分にある? 水産庁の見解に変化が…
二ホンウナギをめぐって日本とEUの意見が真っ向から対立していますが、実際にウナギの数はどうなっているのでしょうか。
ウナギの稚魚「シラスウナギ」の国内採捕量を見ると、1963年は約232トンでしたが、去年は約7.1トンまで減少しています。
また、水産庁も関わっている2024年度の「国際漁業資源の現況」では、二ホンウナギについて「長期的には低水準かつ減少傾向にあると考えられる」とされていました。
ところが水産庁は今年6月、国内研究者の論文を根拠に「ニホンウナギは十分な資源量が確保され、国際取引による絶滅のおそれはない」「1990年以降、資源量は回復している」という見解を示しました。
こうした水産庁の見解の変化をめぐり、海部教授は…
海部教授:
まず「絶滅のおそれはない」ということに関しては、ニホンウナギは環境省によって絶滅危惧種に区分されていますので、環境省の見解と水産庁の見解も真っ向反しているということになります。
そして、「ウナギの資源量は回復している」とする水産庁の判断の変化はガバナンス面で問題があります。
政府の公式の資源評価があるのに、それを無視するということはまず一つやってはいけない禁じ手です。さらに、ニホンウナギの資源の変化に関しては、現在4つの論文がありますが、うち2つが「資源が増加している」と言っていて、もう2つは「減少している」と言ってます。しかし結局、その2つの論文は同じ著者グループが書いたものですので意見は1対1です。
この状態で「増加している」という結果だけを抜き出すのは、いわゆる「チェリーピッキング(=都合の良いことだけを選ぶこと)」です。非常に誠実ではない行為であり、そして誠実でなければ科学的とは言えません。
引用元: ・食卓からウナギが遠のく!? 規制強化めぐる国際会議が開催 [582792952]
では、ウナギの国際取引の規制が強化されたらどうなるのでしょうか。
ワシントン条約では、絶滅が懸念される動植物を「付属書」にリストアップしています。
「付属書Ⅰ」はパンダやウミガメなど絶滅のおそれが高い種を掲載していて、商業目的のための国際取引を原則禁止しています。
「付属書Ⅱ」は、ヨーロッパウナギやキリンなど取引を規制しなければ絶滅のおそれのある種を掲載していて、商業目的の国際取引は可能ですが、輸出国の許可書が必要になります。
そして「付属書Ⅲ」はセイウチ(カナダ)や宝石サンゴ(中国)など、自国内での保護のため他国の協力が必要である種を掲載していて、商業目的の国際取引は可能ですが輸出国の許可書が必要になります。
EUなどは今回二ホンウナギやアメリカウナギなどすべてのウナギを「付属書Ⅱ」に掲載することを提案しています。もし成立すれば、ウナギの稚魚と成魚、加工品について輸出国の許可書が必要となります。
■日本は輸入頼み!? 規制強化されたら…「様々な国が関与するので日本のコントロールがきかない」
日本で流通するウナギの約7割が輸入品
日本で流通するウナギは、2024年の供給量(消費量)6万941トンのうち73%が輸入品で占めていて、そのほとんどを中国から輸入しています。
また、国内養殖でもシラスウナギの約半数を香港などから輸入しています。
海部教授:
大輸出国である中国が輸出許可を出すのかが大きな問題ですが、実は中国から日本が輸入しているウナギのうち7~8割はアメリカウナギです。アメリカウナギに関しては、一番初めに捕獲された国、つまり生息域の国が輸出許可を出すことになります。ですのでアメリカウナギの輸出許可の判断は中国ではなくて北中米の国々、カナダやアメリカやハイチやドミニカといった国々が判断することになります。
もし、それらの国々が許可を出して、中国で養殖されたウナギが日本に輸出される場合は、再輸出ということになります。様々な国々が関与するため、日本のコントロールがきかず、先を予測するのはとても難しいです。
そんな中、国内で格安ウナギを生み出す「完全養殖」の技術が注目されています。
一般的な養殖では、シラスウナギを仕入れ、飼育・出荷しますが、「完全養殖」は親ウナギから卵を採取し孵化させ、赤ちゃんウナギを再び親ウナギまで育てる完全サイクルの養殖です。
2010年に世界で初めて完全養殖に成功しましたが、いまだ商業化には至っていません。その大きな理由が、赤ちゃんからシラスウナギに成長するまでの「期間」です。
水産研究・教育機構によると、マグロであれば通常“赤ちゃん”の時期は1ヵ月ほどですが、ウナギの場合は250日~300日ほどです。さらに衛生面に配慮して1日5回のエサやりのたびに水槽を掃除する必要があるといいます。
また、赤ちゃんウナギからシラスウナギまで育つ割合は10%程度であることから、大量生産は困難とされていました。
完全養殖の最前線に注目
それが今、大きく変わろうとしています。
今年7月に特許を取得した新型の水槽。特徴は「2つの水槽」が平行に置かれていることです。
赤ちゃんウナギがえさを食べ終えたら、水流を発生させ横の水槽に移動させ、空になった水槽を掃除。これを交互に繰り返します。
掃除作業の効率化で水槽のサイズも大きくなり、従来の10倍となる赤ちゃんウナギの飼育が可能に。また、1匹あたりの飼育コストが約4万円から1800円に削減することができたといいます。
水産研究・教育機構は、今後の目標として3年以内に1匹あたりの飼育コストを1000円以下にしたいとしています。
海部教授:
この完全養殖の技術開発は、日本が圧倒的に世界をリードして進めている研究分野です。完全養殖に成功しているのは世界で日本だけです。
今1匹1800円までコストが下がったということですが、完全養殖によって育てられた人工のシラスウナギと天然のシラスウナギを区別して流通させる仕組みがまだ整っていません。
天然のシラスウナギは養殖しても良い量が決まっていて、人工のシラスウナギが混ざると「うちの鰻は人工だから、もっとたくさん養殖しても良い」というような、いわゆるロンダリングに利用される可能性があります。そのため、区別して流通する仕組みを待っている状態です。
水産研究・教育機構としては技術の民間移転を進めていて、商業的に使われるようになればより競争が加速して、低価格化が進んでいくのではと期待しています。
ウナギと今後どう向き合っていけばいい?
最後に、今後必要なことについて海部教授に聞きました。
海部教授は「ウナギを取り巻く環境は変化しているので、今までと同じというわけにはいきません。ウナギは自然界の中でも重要な役割を果たしているので、経済的な対策に加え、これからは野生生物としてのウナギ保全も考えていけない」と指摘します。
家でそんなうなぎ食う?
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