放射能を食べて生きる生物、発見される ゴジラか
「放射能」を「食べて」育つ生き物が、チェルノブイリの立入禁止区域で発見される

しかし、そのような過酷な地でも環境に適応し、繁殖している生物が存在する。
放射性粒子に向かって成長し、電離放射線を栄養源として生存しているその生物は、複数の菌類によって形成された黒カビだ。
電離放射線とは、電子を原子から弾き飛ばすほどのエネルギーを持つ電磁波や粒子線を指す。細胞内で化学変化を引き起こしたり、DNAを損傷したりする可能性がある。人間も自然由来の電離放射線に日常的に晒されているが、度を超えた被曝は健康被害を引き起こす。
米アルバート・アインシュタイン医科大学モンテフィオーレ医療センターのジョシュア・ノサンチャク教授は「菌類はこれまで、過酷な環境下での『訓練キャンプ』をいくつも経験しており、必然的に(その環境に適応するため)防御機能や有利な能力を進化させてきた。放射線を『食べる』、すなわち放射合成は、メラニン色素を生成する特定の菌類が獲得した適応の一例だ。この菌類によるエネルギー変換のプロセスは、クロロフィルに基づく光合成に類似している」と本誌に語った。
米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のマウリツィオ・デル・ポエタ教授(微生物学・免疫学)は、「菌類は非常に長い間存在しており、放射線にさらされるような極限環境でも生存・増殖できるよう進化してきた。我々は今、彼らがメラニンという黒い色素を産生することで放射線から細胞を保護し、生き延びていることを知っている。科学者たちは、放射線によって刺激されて生成されたメラニンが、分解される過程で小さな分子となり、その過程で化学エネルギーが生成されるのではないかと仮定しており、この現象を『放射合成』と呼んでいる」と本誌に語った。
(中略)
引用元: ・放射能を食べて生きる生物、発見される ゴジラか [643485443]
放射能下でも生き残れるのは、人間も持つ「あの物質」のおかげ
1986年4月、チェルノブイリ原子力発電所の4号炉で複数の爆発が発生し、火球となった放射性物質が大気中に放出された。この事故により、放射線が原因の病気などによって、人間や動物が多数死亡した。その後、炉は封じ込められ、周辺約4144平方キロメートルにわたって立入禁止区域が設けられた(ただし、科学者は特別な許可を得ることで立入可能)。
そして、一部の科学者は炉内に黒カビが繁殖しており、それが放射性粒子を栄養源にしていることを発見した。この研究成果は、菌類が宇宙飛行士を宇宙線から守る手段としても利用できるのではないかという新たな探究につながっている。
科学者ネリ・ジダノワは1997年の現地調査の際、チェルノブイリの事故現場で黒カビを発見した。その後、土壌サンプルの分析を通じて、炉周辺の電離放射線が多種多様な菌類を引き寄せていることに気づいた。
ジダノワは、チェルノブイリ周辺で35種以上の菌類が生育しているのを確認。その中には、植物が太陽光に向かって成長するのと同様に、放射線に向かって成長する「放射線走性」の性質を持つものも含まれていた。
その後の研究により、黒色の菌類が極めて強い放射線ストレスにも耐えることができるのは、メラニンという色素の存在によるものだと明らかになった。
メラニンは人間を含む多くの生物に存在する色素であり、人間にとっては紫外線から皮膚を保護する役割を持つが、菌類においては電離放射線からの防御に機能しているようだ。
放射線をエネルギーに変換
また、研究者のエカテリーナ・ダダチョワは、菌類が放射線への曝露に適応できることを発見。菌類が放射性物質の浄化や、宇宙空間での有害な放射線からの保護に役立つ可能性についての新たな研究の道を開いた。さらに、チェルノブイリの菌類が放射線の存在下で実際に増殖を加速させることも明らかにした。メラニンを含む菌類は、電離放射線が存在する環境下で、同じ菌類が放射線に晒されていない場合よりも著しく早く成長した。
加えて、彼女の研究は菌類が放射線をエネルギー源として利用し、それによって代謝活動を促進させている可能性を示した。ダダチョワはこの現象を「放射合成」と呼び、菌類が放射線をエネルギー源として使用しているという理論を提唱した。
「重要なのは、菌類の成長培地には炭素や窒素といった基本的な元素は含まれていた一方、スクロースのようなエネルギー源は存在しておらず、電離放射線がエネルギー源の役割を果たし、メラニンがそのエネルギーを変換する媒体として機能していた点だ。これにより、菌類はそのエネルギーを代謝に利用できたのだ」
ダダチョワによると、菌類は非常に古い生物であり、「地球が磁気シールドを失い、高レベルの電離放射線に晒されていた時代を生き延びた」存在だ。
「結果、菌類は放射線から身を守るためにメラニン色素を用いる方法を進化させ、メラニンをエネルギー変換媒体として利用する術を身につけた」
さらにダダチョワの研究チームは、「特定の菌類に放射性粒子を感知させるよう『訓練』できる」ことを確認した。
ただし、放射線をエネルギーに変換するというこの仕組みが具体的にどのように働いているのかについては、未だに解明が必要である。また、すべてのメラニン含有菌が放射線源に向かって成長するわけではないことも分かっており、未解明の点が多い。
チェルノブイリの黒カビが宇宙開発に貢献?
チェルノブイリに生息する黒カビの研究成果は宇宙探査、特に宇宙飛行士を宇宙放射線からいかにして保護するかという問題解決のための、重要なヒントとなる。宇宙放射線は宇宙飛行士に放射線障害や、がんの生涯リスクの上昇をもたらす可能性がある。
チェルノブイリで確認された菌類は、宇宙放射線にも影響を受けないこともわかっている。一部の研究者はこれらの菌類を国際宇宙ステーション(ISS)に送ったところ、地上よりも成長速度が速かったのだ(ただし、研究者たちはこの結果が複合的要因によるものである可能性もあるとしており、菌類が宇宙放射線にどう反応するかをより正確に理解するには、さらなる研究が必要だ)。
また、研究者たちは菌類が放射線を遮断できるかどうかの検証も行っており、ペトリ皿上の菌類でさえ放射線を防ぐことが出来うることも判明した。これは、菌類が放射線を実際に吸収している可能性を示すものだ。
米ジョンズ・ホプキンス大学の分子微生物学・免疫学部門の学部長を務めるアルトゥーロ・カサデバル教授は、「チェルノブイリ地域で起きているのは、高放射線環境に適応するための進化だ。科学者や宇宙機関が、メラニンのような天然色素を宇宙探査における放射線防御に活用しようと関心を寄せているのは自然な流れである。メラニンを含む素材や、宇宙で培養された黒色菌類は、宇宙船内で人間を放射線から守るのに役立つ可能性がある」と述べた。
「チェルノブイリ地域で観察される変化は、生命がいかにしぶとく、放射線汚染のような有害な環境条件にも迅速に適応できるかを示している。我々は、進化の過程が実時間で起きているのを目撃しているのだ。放射線が強い環境でより生存率の高い黒っぽいカエルが自然選択によって優勢になっている様子などがその好例である」
病原性に対する懸念の声も
一方で、放射線を食べるカビに対する懸念を示す研究者もいる。ノサンチャク教授は「特にメラニンを持つ菌類は、国際宇宙ステーションやミール宇宙ステーション内でも確認されている。宇宙の放射線は菌類を死滅させるものではなく、むしろ成長源となる可能性がある。これらの宇宙菌類は、遺伝的な変異を含め、人間や地球上の他の種にとってより病原性の高い存在に進化している可能性がある」と懸念を示した。
「菌類は進化系統樹上で人間に非常に近い。そのため、人間の病原体として制御が困難であり、菌類にとって有害なものは、しばしば人間にとっても有害であるという難点がある。現在、菌類の研究は著しく不足している。WHOが2022年に発表した病原真菌優先病原体リストでも、(研究の遅れ故に菌類に起因する疾病への対策が遅れているため)菌類による疾病は世界的な重大脅威とされている。人類が(宇宙などの)新たな領域へと進出していく中で、この脅威は今後さらに増大するだろう」
菌類がどのように作用しているのか、内部にどのようなメカニズムが存在し、それが放射線をエネルギーに変換する能力や放射線を吸収する能力にどう関係しているのかを明らかにするための研究は、現在も続いている。
放射能物質で汚染された地でも生き延びる黒カビは人類にとって吉報となるのか、凶報となるのか。今後の研究が待たれる。
(長い…) 引用ここまで
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