横浜港(横浜市)に停泊する海上保安庁の巡視船「さがみ」。航海士を務める芹田信一さん(56)が三角定規とコンパスを手に取り、海上自衛隊仕込みの慣れた手つきで海図に現在地を書き込んでいく。
1988年の海自入隊後、約30年にわたって護衛艦などの航海士を務め、昨年9月に定年退職した。定年の半年ほど前まではタンカーの運航会社などへの再就職を考えていたが、海保が船艇の乗組員を募集していることを知った。
「国民の税金で育ててもらった恩を、公の仕事に就くことで返したい」と思い、応募した。海自の経験が生かせることも魅力に感じた。採用後は研修を経て、昨年12月からさがみに乗船。海難事故などに備えた巡視業務に就いている。
海自の数分の一の人員で船を動かしており、「学ぶことが多く、若い人から教わるのが楽しい。海の上でまた仕事ができるのも喜びです」。一方、海保の担当者は「最前線で活躍してきた自衛官は、知識や技能、経験、 強靱な精神を持っている」と活躍を期待する。
自衛官は、精強性を保つとの理由で「若年定年制」を採用している。部隊の中核を担う「曹」階級の場合、2、3曹は55歳、曹長と1曹は56歳で退職しなければならない。
生涯賃金などで他の国家公務員に比べて不利にならないよう、防衛省所管の一般財団法人「自衛隊援護協会」が国の許可を得て再就職を仲介している。防衛省は、次の職場に向けた職業訓練を行うなどしている。
支援を受けて再就職する隊員は年間約4000人。再就職先は警備会社や製造業などが多い。自衛官の経験が生かしづらいほか、給与が下がるなどと不満を抱く隊員も少なくないという。
そのため政府は2024年12月に公表した自衛官の処遇改善方針で、省庁などの連携による再就職先の拡充を掲げた。航空要員に限定して自衛官OBを受け入れてきた海保が船艇要員にも門戸を広げたのは、こうした流れを受けた措置だ。
昨年3月には総務省消防庁が、退職する自衛官を消防防災ヘリコプターの操縦士や自動車整備士などとして採用していくことを防衛省と申し合わせた。
所管団体などへの働きかけも積極的に行われ、経済産業省は防衛省とともに日本商工会議所や全国中小企業団体中央会に自衛官OBの活用を依頼。農林水産省も各県に対してOBの農林水産業への就労支援を要請した。
その結果、24年12月~25年9月の自衛官向け求人数は、前年同期に比べ1割超増えた。防衛省幹部は「自衛官の定年が早いことは十分に認知されていない。採用側との良いマッチングにつなげたい」と話す。
最終的な目的は自衛官のなり手確保だ。自衛官の募集は年々厳しくなっている。定員(約24万7000人)に対する実員の割合を示す充足率は24年度末に89・1%となり、1999年度以来25年ぶりに9割を下回った。
防衛省の審議会の部会が昨年12月にまとめた提言では、若年定年制の影響で、募集対象となる年代に「自衛官という職業が魅力のないものに映っている」と指摘した。防衛省は充実した再就職支援を採用現場でアピールし、募集増につなげたい考えだ。
ただ、再就職できてもギャップに悩むなどして早期に辞めるOBも少なくない。陸自の23年度の調査では、再就職後1年以内の離職率は約17%に上る。
防衛大学校卒で、自衛官OBの再就職に関する著書もあるジャーナリストの松田小牧さんは、「仕事の選択肢を増やすほか、求職者から職種の希望をしっかり聞き取るなど、丁寧なマッチングが必要だ。求職者も希望する仕事に就けるよう、現役時代からスキルアップを図らなければならない」と指摘する。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20260305-GYT1T00242/
引用元: ・【50歳代半ばで大部分が定年を迎える】政府、自衛官の「第二の人生」支援、海保や消防でキャリア生かす取り組みも・・・不安解消図り志願者確保へ
なんで55歳定年にこだわるんだ?
有事の際や大災害時は明らかに人手足りていないわけだし
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