【韓国のファーブル】“失われた標本” なぜ日本に? 韓国の昆虫学者100年の物語
【韓国のファーブル】“失われた標本” なぜ日本に? 韓国の昆虫学者100年の物語
朝鮮半島のチョウの分布を詳細に調べた著書を残し、韓国では絵本や教科書の題材にもなった著名人だ。
“韓国のファーブル”とも呼ばれるソクだが、生涯をかけて集めた昆虫標本は朝鮮戦争の空襲で焼け、本人も戦争の混乱の中で死亡したため、ほぼすべて失われたものと考えられていた。
しかし、死後70年余りの時を経た去年、その一部が日本の九州大学に保管されていたことが明らかになった。
なぜ、ソクの標本は日本に残されていたのか。そこには、科学の絆で結ばれた日韓の昆虫学者たちの100年にわたる物語があった。(科学・文化部記者 山内洋平)
■日本の恩師が生んだ韓国のファーブル
ソク・チュミョンは1908年10月、ピョンヤンで生まれた。その2年後、日本は韓国を併合。ソクは日本の植民地支配下で育った。
当時、学校で学べる人は限られていたが、家が富裕だったソクは地元の学校を卒業後、1926年に日本の鹿児島高等農林学校、現在の鹿児島大学農学部の前身で学ぶ。
ここでのある出会いが、ソクが昆虫学者の道を歩み出すきっかけになる。
この学校で昆虫学を教えていた岡島銀次教授。
農業を学ぶために留学したソクだったが、講義を受けるうちに次第に生物の研究に興味を抱くようになった。卒業論文のテーマに選んだのはリンゴの木につく害虫、「リンゴドクガ」だった。
何百もの標本を丁寧に紙で包み、正確に採集記録を書いていたソクの姿に昆虫分類学の才能を見いだした岡島。1929年の卒業の際に「朝鮮人として朝鮮半島のチョウの研究に着手すべきだ、10年間必死にやってみよ」と勧めたことが、ソクが昆虫学者を目指すきっかけになったという。
ソクの著作や論文などの文献をもとに伝記を書いた、韓国・チェジュ(済州)大学のユン・ヨンテク名誉教授は、岡島は朝鮮半島に生まれたソクこそ現地の昆虫を研究すべきだと考えていたと推測している。
卒業後、朝鮮半島に戻ったソクは、中学校の教師を務めるかたわらで何十万匹ものチョウを採集して詳細な観察と分析を行い、研究成果を日本の学会などで発表した。
そして岡島との約束である「10年」を迎えた1939年、研究の集大成となる英文の大著「朝鮮産蝶類総目録」を完成させ、イギリスの学術団体「王立アジア協会」から出版する。
植民地支配下の朝鮮半島の出身者が科学的な成果を国際的に発表するのは異例のことだったという。
ソクの成果は当時としては画期的なものだった。
膨大な数の標本に基づく分析と、最新の分類学の知見に基づいて朝鮮半島のチョウをおよそ250種に整理。国際的にも高い評価を得た。
この本の序文で、ソクは岡島に対して「常日頃から温かい励ましと貴重なご助言をいただいた」などと感謝をつづっている。
またソクは、当時新種として発表した2種のチョウに、岡島銀次にちなんだ「オカジマミスジ」「ギンジシジミ」という和名をつけている。分類学の世界で「献名」と呼ばれる習慣だが、岡島を恩師として慕っていたことがうかがえるエピソードだ。
■戦時下も研究続けた“韓国のファーブル”
出版からほどなく日本は太平洋戦争へと向かっていく。
1943年、チェジュ島(済州島)に京城帝国大学の研究施設が開設されると、ソクは所長に就任。このころは昆虫だけでなく、チェジュ島固有の方言や自然、文化についても研究していたという。
1945年、日本が敗戦し、朝鮮半島は植民地支配から解放される。
ソクはソウルにあった国立科学博物館の動物学研究部長に就任し、朝鮮半島のチョウの分布を網羅した本を出版するため研究を続けていた。ところが、もう1つの戦争がソクの人生に暗雲をもたらす。
1950年、朝鮮戦争が勃発。ソクが勤務していた博物館は標本とともに空襲で焼けてしまった。標本を守ろうとソウルに残っていたソクも、動乱の中で何らかのトラブルに巻き込まれて命を落とした。41歳だった。
死亡した原因について確実な記録はないが、ユン名誉教授によると「ピョンヤン出身のソクには朝鮮半島北部の方言があったため、北朝鮮の軍人と間違われて殺されたというのが通説」と説明する。
遺稿は、ソクの理解者だった妹によって守られ、後年「韓国産蝶類分布図」として出版された。
■里帰りしたチョウの標本
以下全文はソース先で
NHK 2025年3月15日 14時52分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250315/k10014748511000.html
引用元: ・【韓国のファーブル】“失われた標本” なぜ日本に? 韓国の昆虫学者100年の物語 [3/16] [ばーど★]
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