欧州のユダヤ人絶滅を計画したナチスは推計で600万人を虐殺した。人間はここまで残虐になるという事実を示すホロコーストは今日に関わる問題だ。差別やヘイトが充満する不寛容な現代社会を克復するためにも「負の歴史」を直視し、継承しなければならない。ホロコーストの事実は、向き合うべき多くの論点を私たちに突きつけている。
戦後のドイツは当初、ナチスの行為に対する反省の意識は低かったとされるが、徐々に「過去の克服」を外交の最優先課題とし、党派を超えて戦争責任と向き合ってきた。
具体的には加害者の責任の追及と被害者への補償、過ちを繰り返さないための教育の徹底が挙げられる。
経済格差や失業問題を背景に、国内で極右勢力の台頭が問題化したが、ナチズムを徹底して否定するドイツ社会の在り方は、ホロコーストの歴史を正当化するネオナチの台頭を抑止してきた。賠償に向き合う政府の姿勢も、関係国などから一定の評価を得るものだった。
翻って日本の戦争責任への向き合い方はどうか。中国大陸や朝鮮半島への侵略の歴史について、戦後50年の村山富市首相談話は「植民地支配と侵略への反省とおわび」を明記した。「従軍慰安婦」問題については1993年の河野洋平官房長官談話によって日本軍の関与を認めた。
しかし、国会議員や閣僚らによる靖国神社参拝は毎年繰り返されている。「慰安婦」問題では、日本軍による朝鮮人女性の強制連行を否定する議論もある。このような動きに対し中国や韓国は反発を強めてきた。徴用工問題への対応に端を発し、韓国との関係は一時、戦後最悪といわれるまで冷え込んだ。
首相談話など政府声明を出したことで問題は解決したと考えるならば、植民地支配など日本の「負の歴史」を後世に引き継げない。ドイツのシュタインマイヤー大統領はアウシュビッツ解放80年に合わせた声明で「私たちドイツ人は忘れない。記憶にも、責任にも終わりはない」と強調したことを胸に刻みたい。
ホロコーストの背景には、第1次世界大戦の賠償金を課されたドイツで、ユダヤ人へのねたみが増長していたことがあったとされる。国民の熱狂的な支持を受けていたナチスは、同性愛者や少数民族も迫害の対象とした。
障がいのある人や性的少数者、外国人に対するヘイトがはびこる不寛容な社会が最終的に何をもたらすか、アウシュビッツの歴史は証明している。「負の歴史」を正しく継承することは、不寛容な社会を改めていくことにもつながる。歴史に学ぶことのできる私たちの課題としたい。
琉球新報 2025年01月29日 04:00
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-3909633.html
引用元: ・【琉球新報/社説】強制収容所解放80年 「負の歴史」の直視、継承を [1/29] [右大臣・大ちゃん之弼★]
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